Dr.Q's BLOG

2010.02.19更新

 「日本臨床矯正歯科医会例会に出席してきました」

2010年2月17日(水)と18日(木)に東京の東京ステーションコンファレンスで開催された平成21年度日本臨床矯正歯科医会2月例会に参加してきました。そのため、菅沼矯正歯科は、17日(水)は小嶋先生による診療とさせていただき、18日(木)は通常通り休診でした。私は16日(火)の診療終了後に豊橋から東京に移動し翌日からの例会に備えました。

矯正歯科医会の例会は毎回とても充実していますが、今回も盛りだくさんの内容でした。特に今回は症例展示に過去最高の95名の会員が症例展示されました。さすがに95症例もの矯正歯科治療治験例の展示がされると見るのが大変でした。95症例の内訳は上顎前突:21症例、下顎前突:13症例、叢生:16症例、開咬:17症例、口唇裂・口蓋裂・外科矯正:9症例、治療結果や予後に問題があった症例や再治療症例:5症例、その他:12症例でした。



1日目はやはり教育講演の北海道医療大学個体差医療科学センター(歯学部門口腔内科学分野)大学院歯学研究科(臨床口腔病理学)安彦善裕先生 による「矯正歯科治療時に考慮すべき、患者の精神医学・心理学的背景」 が印象に残りました。安彦先生は私が東京歯科大学の学生時代に東京歯科大学大学院研究科で病理学を専攻されており、病理学実習の際には私も指導していただいた記憶が講演を聴いている間に蘇ってきました。お話しは先生が、イギリス、ロンドン大学イーストマン歯科研究所での臨床研修後、大学に「口腔内科相談外来」を開設し、ドライマウス、舌痛症、口臭症、口腔粘膜疾患など、外科処置を伴わない口腔疾患への診断・治療を行った経験から、これらの疾患の発症には心因的な背景を伴った人が多く、心身医学、精神・心理学的な知識が必要となるとのことでした。また、口腔領域に器質的変化の見られないものは「歯科心身症」と呼ばれ、近年このような患者が増加傾向にあるようです。
矯正歯科治療の場合には、特に「咬合」と「審美」がキーワードですので、歯科心身症の中でも「咬合」と「審美」に関連した患者さんの受診の可能性があり、その患者さんの心理的な背景を理解する必要があるとのことでした。抑うつ傾向やうつ病の患者さんには咬合異常感を訴えることや、身体醜形障害の患者は美容形成外科、皮膚科などに次いで審美歯科や矯正歯科を訪れることが多いとのことでした。
歯科心身症は心の病であり歯科のみで治療を行うには限界があります。心療内科などと連携が不可欠になるでしょう。ストレスの多い現代社会での生活では、心の病を持った患者さんも歯科や矯正歯科を訪れます。このような分野をもっと学んでおかなければいけないと実感しました。






2日目の興味深かった講演は、まず、委員会プログラム 2(広報委員会)での早稲田大学商学学術院長兼商学部長 恩 藏 直 人先生 による「日本臨床矯正歯科医会の広報活動における課題と今後の方向性」と言う講演でした。2003年よりPR会社プラップジャパンの協力を得て医会や矯正に関する啓発活動を進めてきました。恩 藏先生は「全国広報キャラバン(市民セミナー)」や「ブレース・スマイルコンテスト」を非常に高く評価しながら、一方で「日本臨床矯正歯科医会」や「矯正歯科医の認定医制度」などの認知度が低いことは今後の活動に関して検討していかなければならないと思われる。その上で、対象となるターゲットを明確にすること。5年〜10年と言った中長期的な目標を明確化し、広報活動の方向性を設定するべきである。その際に何を人々に浸透させたいのか?どのようなイメージをイメージを構築したいのかという点を議論し、医会しての優先順位を確定しておく必要があるとの提言であった。
日本臨床矯正歯科医会の広報事業にこの8年間に渡って携わってきた私にとっても非常に興味深い講演でした。





その後、行われた特別講演では埼玉医科大学医学部口腔外科学講座教授 依田哲也先生が「顎関節症診断のガイドラインと咀嚼筋腱腱膜過形成症の話」と題した講演をされました。顎関節症の分類を臨床症状に即して解りやすく解説していただき、それろれに対して治療法をお話しになりました。また、依田先生も前日の安彦先生同様に顎関節の不調和を訴える患者の中には、ストレスなどの心理的要因が強い患者も多く見受けれることをご指摘されていました。
そして、顎関節症として紹介される患者の内、約20%弱は顎関節症以外の疾患で、そのうち咀嚼筋腱腱膜過形成症と言う疾患を指摘されました。この疾患は側頭筋や咬筋の腱膜が過形成することで筋の伸展が制限されて開講障害を来す疾患であり、この数年で注目を浴びるようになってきたとのことでした。昨年、テレビ朝日系列で放送されている「最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学」でも紹介されたとのことでした。





その後、お昼休みを挟んで、午後からは 昨年開かれた宮崎大会のアンコール賞受賞者の先生方の発表が行われました。

最初に近畿北陸支部の居波徹先生による「上顎大臼歯の圧下により下顎骨の前方移動を図った上顎前突症例」について講演されました。まず、見えない矯正歯科治療の舌側矯正歯科治療による方法で、口唇の前突感がきれいに治る症例と、咬合はきちんと治療されても口唇の前突感が若干残存したり、口唇閉鎖不全が残ったりと側貌の審美性に問題が残ってしまう症例群との比較を発表されていた。それは下顎の位置の問題が大きく関与しており、特にハイアングルケースでのオトガイの後退が問題になるとのことであった。その上で、ハイアングルの上顎前突症例で、歯牙の状態により上顎に関して第2小臼歯を抜歯選択せざるを得なかった症例をご呈示いただいた。上顎にリンガルアプライアンス、下顎にマルチブラケットのハーフリンガルで治療されたアングルⅡ級1類、上顎前突、ハイアングル症例で、上顎正中口蓋部に矯正用のアンカレッジとしてインプラント(TAD)とパラタルバーを用い上顎臼歯を圧下し、見事に下顎をcounter clockwise rotationさせ下顎オトガイの前方移動をされていました。また、上顎第2小臼歯抜歯でレバーアームを用いて前方の8歯の牽引後退をラビッティングすることなくきちんと歯体移動されていました。舌側矯正歯科治療では前歯の後退の際にトルクが欠如してラビッティングしていまいがちであるが、矯正治療のメカニクスを熟知し牽引方向をレバーアームで工夫された素晴らしいケースでした。

 

2番目は、同じく近畿北陸支部の澤田大介先生が「上顎の圧迫骨短縮の後、下顎枝垂直骨切術を行った下顎前突症例」と題した講演をされました。ハイアングルの骨格性反対咬合症例であり、外科的矯正歯科治療を必要とする症例であった。術前矯正の期間短縮と上顎前歯部の移動に伴う根吸収を回避するためにSegmental Corticotomyと圧迫骨短縮による上顎前歯部の後上方移動を図った症例であった。術前矯正治療3ヵ月後にSSROにて下顎後退が行われた。上顎前歯部の後退には頬舌側にTADを用い前歯の Torque controlされていました。

3番目は、九州支部の久保田隆朗先生による「下顎第二大臼歯抜歯により治療を行った骨格性下顎前突症例」と題した講演でした。アングルⅢ級の反対咬合で、上顎側切歯の先天性欠如のある症例であった。下顎第二大臼歯を抜歯され下顎歯列を後退させた症例であった。矯正歯科治療を開始するタイミングと第3大臼歯の根形態の確認が非常に重要であることを説明されていました。

最後に北海道支部の茶谷仁史先生による「CBCTとステントを用いた早期の下顎第三大臼歯歯胚摘出術」と題して講演されました。下顎第三大臼歯は歯列を乱す原因のみならず下顎第二大臼歯の根吸収を起こしたり、第2大臼歯の萌出障害を起こしたりします。また下顎第一大臼歯の根吸収を引き起こすこともあると症例を示して説明されました。それを未然に防ぐために下顎第三大臼歯抜歯が必要であるが、早期の第3大臼歯の抜歯は外科的侵襲も大きく、現在では日本の保険制度での適応外の診療と解釈されているために口腔外科での抜歯が自費となってしまい、患者に経済的な負担をかけてしまう。また、当然、第3大臼歯の歯胚摘出術は保健適応外となってしまう。Nollaの分類の骨包の出現(StageⅠ)から石灰化開始(StageⅡ)までの歯胚の摘出術は骨削が不要で矯正歯科医でも容易な摘出が可能とのことでした。その時に歯胚の位置を確認するためにパノラマX線写真と作業用模型でステントを作成しCBCT撮影し歯胚の位置を確認し摘出術を行うということでした。

今回の平成21年度
日本臨床矯正歯科医会2月例会で学んだことを菅沼矯正歯科での日常の臨床に生かして行こうと思います。


 

「綺麗な歯並びで健康的な生活を!」
 ”For your Beautiful Smile & Healthy Life" 
「菅沼矯正歯科」







投稿者: 有限会社イーオルソサービス

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