小児矯正

矯正治療を始めるタイミングについて

「矯正治療は早く始めればその分早く終わるのではないか」と考える方が多くいらっしゃいますが、矯正治療は成長に合わせて行っていくべき治療であるため、早く治療をスタートすると治療期間も管理期間も長くなります。必要な治療を、最適な時期に、最も効率よく行うことがお子さん自身の負担を減らし、結果的に治療費も抑えられることになります。発育には個人差がありますが、一般的な目安としては上下の全歯が永久歯に生え変わる8~9歳頃が第一段階の治療開始のタイミングになります。早すぎる時期に相談に来られた方には「もう少し待った方がいいですよ」とお伝えすることもあります。少なくとも治療の必要性をお子さん自身が理解し、写真撮影や検査が問題なく行える程度には成長していなければ治療が順調に進みません。当院ではお子さんの性格やパーソナリティを考慮し、根気よく、慎重な治療を受けていただけるよう努力しています。

早過ぎる治療開始のリスク

早く治療を始めると顎の成長を利用して抜歯をせずに矯正できる可能性が増しますが、歯列を拡大して全ての歯を並べるために、治療後は当初よりやや口元が出てしまう場合があります。特にお母さんの強い希望で早く矯正を開始して非抜歯で治療しても、ご本人が成人されてから価値観が変わり、口元が気になって再治療されるケースも見受けられます。お母さんだけが治療に一生懸命で、お子さん本人はやる気を持てないまま早過ぎる時期に治療を開始すると、中学生や高校生の頃に治療のモチベーションが落ちた状態で最終段階を迎え、良い状態で治療を終えることができないという場合もあります。良好な咬み合わせや綺麗な口元を得るために、永久歯が全て生え揃うまで待った上で抜歯治療を選択される方も多く、あらゆる面で納得して矯正治療を受けていただけるよう、検査結果を元に事前に充分な話し合いを行った上で治療開始のタイミングと治療方針を決定しています。

小児矯正治療でお母さんにお願いしたいこと

矯正治療を開始してからある程度の時間が経って歯並びが少しずつ治っていくと、治療を行っているお子さん本人と同時にお母さんの治療に対する熱意も下がってしまう場合があります。当初は歯並びや健康のことに向けられていた関心や興味が、期間が経過していくにつれてそれ以外の進学や習い事のことなどに分散されてしまうためです。お子さんにとっては、器具の装着の煩わしさやワイヤーによる傷みなど、治療の間さまざまな我慢を強いられることになります。お子さんが頑張るためにはやはりお母さんの励ましが何よりも効果的です。お子さんの歯の異常にいち早く気づき、治療に一歩踏み出すきっかけを作ることと、治療の間お子さんを身体的・精神的に支え続けることはお母さんだからこそできる大切な役割です。当院としてもお子さんの健康を想うお母さんのご期待にお応えできる医院であるために常に努力を重ねています。

矯正治療で感じる痛みについて

お子さんの矯正歯科治療を検討されている保護者の方の中には、矯正治療中の痛みに対して不安を感じている方も多いことと思います。矯正治療は同じように治療しても患者さまによって痛みを感じる方とまったく感じない方に分かれ、非常に個人差が大きいものです。治療を始める前に「痛みは治療の初期ほど大きいこと」「同じ方でも年齢が上がれば上がるほど骨が固くなるため痛みを感じやすくなること」「もっとも痛みを感じるのは装置を付けて2~3日の間で、それ以降は徐々に慣れていくこと」をお伝えしています。食事の際にぐっと噛みしめると痛みを感じることがあるので、気になる時にはあまり噛まずに食べられる柔らかいものを選んで食べていただくと安心です。どうしても痛みが我慢できない場合は鎮痛剤を服用しても構いません。矯正治療を始めるとほとんどの方がこの歯が動き出す時の最初の痛みを経験することになりますが、小さなお子さんでも耐えられる痛みであり、それほど心配する必要はありません。

小児矯正で使用する装置

フェイシャルマスク

上顎前方牽引装置といわれるもので、上顎を前方へ引っ張るための装置です。上顎の成長が足りず、上顎が引っ込んでいるために下顎が出ているように見える骨格的な反対咬合(上下の歯の咬み合わせが逆になる受け口)の方に使用します。

チンキャップ

チン(下顎)を押さえて成長を抑制するための装置です。下顎前突(下顎が出ているタイプの受け口)の治療に使用します。日本人の反対咬合では下顎が出ている人より上顎が引っ込んでいる人の方が多いため、フェイシャルマスクと比較すると使用頻度は低くなっています。

ヘッドギア

上顎前突(出っ歯)を矯正するための装置で、上顎を押さえるために使用します。帽子のように頭にかぶって上顎の位置や成長速度のコントロールを行います。

上顎急速拡大装置

上顎を広げる際に使用する固定式の装置です。中央にあるネジを回転させることで上顎が徐々に横に広がっていき、歯が並ぶスペースの確保を可能にします。

クアッドヘリックス

上顎急速拡大装置と同じく、上顎の歯列の幅を拡大する際に用いられる固定式の装置です。ループ状に曲がったワイヤーの弾力を利用して、時間をかけて顎を広げていきます。

ツインブロック

この2つは機能的装置と言われるもので、上顎前突のケースなどで上顎の成長を抑制し、下顎を成長促進する効果があります。

プレート

取り外し可能な装置で、小児矯正では特に使用する機会が多いものです。顎の骨を拡大したり、内側に入っている前歯を前に出したりする際に使用します。