| #147 | ||
![]() 平成16年9月29日・30日に千葉のホテルグリーンタワー幕張で行われた、第32回日本臨床矯正歯科医会大会に参加してきました。常に新しい知識と技術を求め研鑽すると同時に、社会からそして患者さんから求められる心の通った医療を展開していこうとの決意表明として「社会に開かれた医療を求めて」をメインテーマに開催されました。 コデンタル・ワークショップ「矯正歯科・保険請求のエキスパートになろう!」日本矯正歯科学会 医療問題検討委員会 昭和大学歯学部歯科矯正学教室講師 中納治久先生 1982年に唇顎口蓋裂の矯正治療が健康保険に導入されて以来、顎変形症、厚生労働大臣が定める先天異常の6疾患も適応を受け、さらに2004年の社会保険診療報酬改定でさらに4つの先天性疾患も健康保険の対象となりました。 ・唇顎口蓋裂 ・第一・第二鰓弓症候群 ・鎖骨頭外異骨症 ・Crouzon症候群 ・Treacher-Collins症候群 ・Pierre Robin症候群 ・Down症候群 ・Russell-Silver症候群 ・Turner症候群 ・Beckwith-Wiedemann症候群 ・尖頭合指症 近年、健康保険組合連合会は医療費の財政悪化を理由にレセプトの審査体制を強化し、過剰請求や請求ミスを防ぐことによる支出削減を実施することを決定。また、最近の世論調査ではレセプトや診療録(カルテ)の開示を指示する声も多い。これらは、適正な診療録の記載や保険請求事務が必要であることを意味し、矯正歯科における診療を行う上で必要不可欠である。 講演では、今年度行われた診療報酬改定の要点と矯正歯科における保険診療の基礎に関しての解説と実際の手順に従っての実習(カルテ作製シミュレーション)がありました。 保険請求の正しい知識と請求方法を熟知した歯科医院スタッフの育成が重要かつ急務だと言われ、多くの要点や診療録(カルテ)記載の注意事項、基礎知識などを説明していただきましたが、実際に全てを理解してすぐに診療に役立てるのは大変そうだと感じました。 シンポジウム1 「矯正歯科医療と社会との関わりを考える」 ー口唇・口蓋裂児家族会の視点からー ■安田真理先生 口友会副会長 『患者が矯正歯科医を選択するときに考えること』 <親として矯正歯科医に信頼をおくポイント> ・丁寧で分かりやすい説明 ・選択肢を与える⇒プランを提示するだけではダメ ・専門家としての意見を提示する⇒「私は〜のやり方がいいと思うと、理由は〜だから」 <患者の声に耳を傾けて!> ・審美性のみにとらわれず患者のQOLへの理解 「食べ物を食べやすい?」「歯が磨きやすくなった?」などの一言 ・どのような処置であっても処置前に必ず説明してほしい 何をされるか分からないことへの恐怖 「今日は〜するよ。ちょっと痛いけどがんばろう」 ・矯正治療を楽しく受診したい 成果・希望・理由づけなど受診を納得することで生活を前向きに お互いに気持ちよく「よかったね」と思えるように ・いつも味方でいてほしい 疾患への理解 専門家として親や本人と向き合って欲しい ■的場智子先生 <矯正歯科医療でも告知> ・抜歯や外科的矯正治療を伝える時の配慮 ・予期せぬ合併症、治療結果が生じた時 ・プライバシーへの配慮 ・感染症(肝炎)を持つ患者さんへの配慮 ・治療方針のご家族への説明 ・主訴、現症の指摘への配慮・・・気を配る <社会における医療> ■井藤一江先生 井藤矯正歯科 <家族会を作ったきっかけ> ・患者のお母さんは男性の先生には聞きにくい⇒家族の人が、何でも相談できる場が必要だ! ・治療全体の見通しに関する説明(情報)が不足している <家族会を運営する場合の注意点> 他の病院で治療を受けている人がどうする? 特定の病院を勧めてはいけない 治療を無理強いしてはいけない←したくない時に無理にしなくてもいい 我々がこんなに努力しているのに!は駄目←何でわかってくれないのと思うのは良くない <家族に必要なサポート> 精神的サポート 治療などに関する知識=安心 治療の進歩、技術の研鑽 <手術関係者との関わり> 一番重要なのは手術⇒良い術者を得ることが大切 手術に対する意見や希望を言える間柄になりたい <家族会と関わって自分が変わったこと> 「おめでとう」と言えるようになった コデンタル・ワークショップ 「口腔筋機能療法(MFT)の上手な取り入れ方」 ■高橋矯正歯科クリニック 高橋未哉子先生 高橋 治 先生 <舌癖と指しゃぶりへの対応> 口腔筋機能療法とは、口唇や舌などの口腔周囲筋の機能を整えることにより、歯列や顎骨の正常な形態を維持するのに好ましい環境作りを目的としたトレーニング方法です <MFTの手順と目標> ・個々の筋肉の訓練 ・咀嚼、嚥下、発音の訓練 ・舌の正しい位置 <正常な安静位のイメージ> 舌は口蓋にリラックスした状態でぴったりはまりこんでおり、口唇は軽く閉じ、臼歯は合わさっておらず鼻で呼吸する <異常な嚥下パターン> ・咀嚼位置が前方である・・・舌は口腔の前方だけで不活発に動き、口元だけでもそもそしている ・食塊を舌背上に吸引する舌側方部の力が弱い・・・口唇や頬を強く収縮させて食塊を集める ・舌前方部が口唇と接触する <筋肉のバランスを乱す原因は?> ・現代食(軽食)・・・咀嚼機能は、生後学習により後天的に発達する。成長期における食事の内容が 咀嚼、嚥下に影響を与える ・口呼吸(アレルギー、扁桃肥大)・・・アレルギーがあるから、口呼吸は無理と思わず鼻で呼吸して ごらんと言う ・舌小帯の付着異常・・・舌小帯のトレーニングをすれば8割ぐらい伸びる。切らずにすむ。ポッピング を1日30回。舌小帯を切る前に舌を持ち上げるレッスンを1、2ヶ月行う ・指しゃぶり ・乳歯の早期喪失 <MFT指導者として必要なこと> ・歯科治療の内容がわかる者→カルテが読める、口腔内の装置がわかる ・デモンストレーションが完璧にできる→1つ1つの訓練のデモが明確に示すことができる ・根気強く指導にあたること→できなくて当たり前という意識を常に持つ 専属のセラピストがしっかりと時間を確保して、独立した空間で行うきっちり型のトレーニングは患者も術者も集中力が高まるため効果が上がりやすいのですが、なかなかそのような環境ができない場合には、ワンポイント型のレッスンで対処せざるを得ないと思われる <患者に与えるレッスン時の注意> 1.カセットテープを使いながら練習する 5.動作にメリハリをつける 2.鏡を見ながら練習する 6.常に頭でそれぞれの筋力へ指令を送る 3.筋肉の感じを覚えながら練習する 7.毎日欠かさず練習する 4.姿勢を正しくして練習する MFTによる機能改善と、矯正による形態改善を併用することにより、より安定した結果となる 特別講演1 「独創性と発想の転換ー開かれた医療を求めてー」 千葉大学名誉教授 多湖 輝先生 『世の中は激変している。従来のシステムを根底から見直し、作り変えていく勇気と常識や習慣を超える独創的な発想が求められている。困難な未来を見据えた発想の大転換、そして迅速で合理的な集団意思決定システムの創造、私達のクリアにしなければならないハードルは創造を絶するほど高くシビアなものである』と、お話されましたが、同じように感じます。やってみなければいいか悪いかわからないし、やってだめであればそれなりの反応がきます。1つのことをやり遂げるにも、幾通りかの方法があるはず。考えを固定すれば、そこでストップしてしまう。考えを固定せずにいろんな発想を出し合い、話し合って新しいことをすることにより開かれた医療に近づけるのではないだろうか。仕事の面だけでなく、日常にも言えることを教えていただきました。 特別講演2 「再生医療はどのように矯正治療に応用されるか」 東京大学医科学研究所教授(幹細胞組織医工学) 名古屋大学大学院教授(医学系研究科頭頸部・感覚器外科学) 上田 実先生 再生医療の最大のメリット・・・少量の細胞から多くの自家組織を再生することができること <骨の再生医療> 顎裂部への骨移植はすでに確立された術式になりつつありますが、骨再生が自在に行えるようになれば矯正治療も俄然やりやすくなります。骨髄細胞から幹細胞を取り出し、冷凍保存しておけば、何度でも使用する事ができ、生涯にわたって細胞を活用することができるのです。骨だけではなく、軟骨、粘膜も同様のことができるので、口唇口蓋裂の治療などでは根本的な治療体系の見直しが行われるかもしれません。 <注入型培養骨の利点> 1.毒性がない 4.侵襲が少ない 2.免疫拒絶がない 5.凍結保存ができる 骨再生・・・自身の細胞を使用する 3.注入しやすい 『再生医療で歯科の未来はどう変わるか』 ↓ ・適応症の拡大 ・完成度の高い審美治療 骨は十分に作れるようになった→どのように作るか?どのように活用するかは先生方次第 学術展示 「矯正歯科啓発用コンピューターRPGゲームの製作について」 千葉支部 父親と息子が親子でRPGゲームをすることで楽しみながら矯正歯科に親しんでもらうことを目的として、矯正歯科啓発用コンピューターRPGゲームを作成。 ゲーム前半は予防歯科がテーマに、後半は矯正歯科治療に関することがテーマになっていて、実際に市民セミナーで来場者にプレーしてもらったところ、そのアンケート結果から予防歯科、矯正歯科治療に対して親近感が増し、意図した啓発効果が期待できたとのことでした。 本大会の会場でゲームの入ったCDを配布していたので、持ち帰って実際にプレーしてみましたが、私達の年代でも十分楽しめ、また予防歯科についても、よくわかりやすくゲームに組み込まれていました。こういった形で矯正歯科治療に親しんでもらう手段もあるのだと、感心しました。 【感想】 今回の大会では、1日目に講演が固まってしまっていて、なんだかもったいない気がしました。中納先生の講演では、改めて保険請求の難しさを実感しました。最近は審査も厳しく、返戻も多くなっているような状況でしたが、今後は今回の講演でのことを参考に、初歩的なミスを減らし、解らないところはその都度勉強しながら、知識を深めて行きたいと思いました。 シンポジウムを拝聴して、当院でも何度もミーティングを行ったり、実施してきたことが正しかったと思える内容だったと思いました。「患者さん中心で・患者さんの立場になって」というようなことが口唇・口蓋裂患者さんだけでなく他の患者さんにとっても大切だと思うし、スタッフもその気持ちを一番に治療に携わっていると思います。しかし、ちょっとした一言などで、患者さんは深く傷ついていたり、それを私達が気づかなかったというようなことも、時々あるので、今後は今まで以上に気を付けて治療や患者さんへの接し方を考えていきたいと思いました。また、すべての患者さんにまず、治療前にどういうことを今日はするのかを説明できるようになり、治療後には何か質問がないかなど患者さんの意見も聞く時間を作れるといいなと思いました。 MFTの講習会は、なかなか聞く機会が少ないので今回はいい機会でした。患者さんだけでなく、指導者側も楽しんでやれるようなMFTを目指して、また患者さんのやる気を高めるために、高橋先生の体験談を参考に、いろんな工夫をしていきたいと思いました。 2日間という時間でしたが、見直すべきことがたくさんあるのではないかと感じました。 |
