#128
【Section 5】
患者に選ばれる医療機関の条件



平木 「人に伝える」という意味では、日ごろの診療所での患者さんとのコミュニケーションも広報活動のひとつですね。大切なのは、患者さんが治療に何を求めているのか、またその思いをどれだけ我々が汲み取れるのかを理解したうえで、患者さんにわかる言葉で伝えていくことでしょう。そもそも矯正歯科治療はその特質上、患者さんにある程度のガマンを強いることになりますから、その分よけいにコミュニケーションが大切になるのではないかと思います。

菅沼 広報活動は、そうしたコミュニケーションのきっかけづくりのようなものとも言えますね。ただ、医療家にとっては両刃の剣でもあります。矯正歯科治療について一般の患者さんの理解が深まるほど、当然ながら歯科医を見る目が肥えてきますし、「相談に行って迷ったらセカンドオピニオンを」ということを情報として伝えれば、患者さんとしても二軒目、三軒目の診療所に行こうとする。そういう流れの中で、選ばれる専門医であるためには、技術はもちろんのこと、コミュニケーション力も重要だということになりますね。

池森 今、大学の医学部や歯学部の教育の中でコミュニケーションに関する実習が標準化されつつあります。要は今後、そういう意識をもった学生が輩出されるということです。我々の時代には、そういう技術は大学教育では習いませんでしたから、単純に考えると、今後10年、20年で、患者さんに対するコミュニケーション能力の差はさらに開くのではないかと思います。

平木 そうですね。矯正歯科専門医として、治療技術が高水準であることは、言ってみれば当たり前。極端な話かもしれませんが、いくら価格が安くても技術的に未熟なところでは患者さんの満足はあり得ませんから。そして、そのクオリティを維持するための労働集約的な産業である以上は、必要な経費はかからざるを得ない。大切なのは、そのことを患者さんがきちんと納得してくださるかどうか。そこにも我々と患者さんの間でのコミュニケーションが介在する気がしますね。

池森 そもそもコスト競争が発生するのは、コストに見合う付加価値を患者さんが認めないから起こるわけです。反対に、付加価値を認めればコスト競争は起こらない。そのためのキーポイントは、やっぱりコミュニケーションにあるのではないかと思います。

平木 そうしたことを含めて考えると、今、まさに矯正歯科医療のパラダイムが変わってきていると言えるでしょう。すそ野が広がって、矯正歯科が技術だけで選択された時代はすでになくなりつつあります。

池森 ええ。たとえば学校のテストで60点が合格点とすると、矯正歯科治療の専門医である以上、治療の技術面では合格点で当たり前。つまり、技術の差というのは大きくないわけです。その分、トータルで患者さんが受けるサービス内容に差が出やすい。要は、技術編重型ではなくなってしまうということですね。

菅沼 よく、診療所にいると時代の変化やニーズを実感するのが難しいのではと言われることもありますが、今後はそういう客観的な目を我々自身が養っていくことが大切でしょうね。

池森 そのためにも診療所の中にこもらずに、いろんな場所に行って、いろんなサービスに触れてみる。行動半径が広ければ広いほど、先ほど平木先生がおっしゃったような理解力やコミュニケーション力が身につくのではないでしょうか。
 話がずいぶん脇にそれましたが、市民公開講座や啓発ムックといった会の広報活動を通じて、患者さんとのよりよいコミュニケーションのあり方について、会員それぞれが考えることができればと思います。
(おわり)

■パンフレット
会員に配られる矯正歯科治療についてのパンフレット。診療所内に置き、患者さんが気軽に持ち帰れるよう、A4三つ折りサイズとなっている。


平成16年度事業計画(案)

1.ホームページの改訂
 今後ますます重要度が増すと考えられるホームページに関して、多面的な展開を図る。内容としては、従来から継続してきたホームページの充実を継承するとともに、ムックのようなテイストを持ったホームページの展開を検討する。

2.マスメディアに対するパブリシティ活動の展開
 今年度に引き続き、新聞・雑誌・TV番組等へのパブリシティ活動を展開する。

3.広報キャラバン
 今年度に引き続き、全国各地で本会主催の市民公開講座を開催する。マスコミの取材誘致を図ってパブリシティの一環とするとともに、支部との共同作業を通じて支部活動活発化にも寄与する。

4.支部単位の広報活動の支援
 今年度に引き続き、支部主催の広報活動への支援を行う。方法としては、活動のノウハウ提供、講座の開催通知や取材誘致をパブリシティ活動で支援、パンフレット、ポスターやムックの提供などを考えている。

5.啓発ムックの制作
 今年度に引き続き、新たなムックの制作を行う。

6.広報効果の判定
 今年度に引き続き、マスメディアの広報効果の評価を研究対象としている大学の研究室等に依嘱し、客観的な評価を得るとともに、医療以外の分野の学会で発表されることで広報活動のさらなる拡がりを求める。

7.パンフレット、ロゴグッズ等の管理
 今年度までに制作したパンフレットやロゴグッズの保管・配布・補充を図り、継続して広報に活用いただく。

8.ニューズレターの発行
 今年度に継続してニューズレターの発行を行ない、会内での情報伝達の緊密化に努める


【表紙】 「矯正臨床ジャーナル〔JOURNAL OF ORTHODONTIC PRACTICE(JOP)〕
2004年4月号に院長が登場する座談会が掲載されました。」
【はじめに】広報活動の意味するものー2004年度の取り組みと今後の展望
【Section 1】矯正歯科治療は、今まさに過渡期
【Section 2】切り口の異なる受け皿を用意して
【Section 3】インナーコミュニケーションの大切さ
【Section 4】広報=スローフードで体質の改善を
【Section 5】患者に選ばれる医療機関の条件