#128
【Section 4】
広報=スローフードで体質の改善を



池森 ちょっと話がずれますが、うちの診療所の場合、広報活動の内容そのものが引き金になって来院された患者さんが目立って増えたわけではありません。ただし、積極的で具体的な広報活動が行なわれるようになったことで治療を取り巻く多くの人々の意識レベルが上がってきたということは言えると思います。つまり、広報活動に直接参加したり、広報活動で使われるグッズを目の当たりにすることによって、各診療所の先生だけでなく、スタッフも意識が上がってくるわけです。
 もちろん、それは先に述べたように内部への広報が必要ですので、診療所の院長はスタッフにも情報を伝えて診療所を取り巻く環境の把握を共有しなければなりませんが、そういう観点でいくと、明らかに各診療所にとっても効果はあるんですね。というのも、スタッフが患者さんにいろんな話をする中で、患者さんは矯正歯科治療について自分の診療以外の知識も得ます。そして、得た知識を患者さんがまわりのご友人などに話をして、結果的にそのご友人が患者さんになるという図式が成り立つわけですから。
 ひとつの広報事業が、即、直接的に会員の経営状態に影響するわけではありませんが、治療の中ではムックや新しくつくったパンフレットなども使っていますし、そのことがスタッフとの話題の共有にもなりますので、各診療所単位で努力をしていれば、将来的な成果につながるのではと思っています。言ってみれば、北風と太陽のお話のようなものではないでしょうか。

平木 そうですね。よく「患者さんにムックなどを贈呈しても、すでに患者さんなんだから知っていることばかりが載っていて意味がないのでは」と言われることがあります。でも、ある患者さんのまわりにはその方の治療に注目しているギャラリーが必ずいるんですね。ですから、ムックを手渡したら、その本は患者さんの手元にとどまらずに、関心のあるギャラリーのもとに行くことになる。つまり、そういう方の関心をさらに深めることができるんです。なので今、診療所を訪れている患者さんにどう広報していくか、いわゆる草の根広報ですが、これが大切なんだろうなと。もちろん、会として全国レベルで行なう広報も大切ですが、それだけではなくて、それぞれの診療室を通じて、あるいは患者さんを通じての広報が一つひとつ実を結んでいくんじゃないかと思いますね。

池森 ある方がこの会の広報活動をご覧になって、「これは身体の弱っている人に特効薬と思われる注射をしているようなものだ」とおっしゃいました。そして、「その特効薬が効かなかったらどうなるか?とか、いつまでも注射を打ち続けなければならないか?と言う疑問が出てきたらどうされるのですか?」とお尋ねをいただいたことがあります。
 けれど、広報というのは本来、「スローフード」のようなものだと思うんです。そんなふうに意識を切り替えていただかないと、効果がすぐに目に見えないと「どうしてくれるんだ」ということになってしまう。もちろん、スローフードでも効果は出てきてほしいわけですが、それはしばらく先のこと。即効性よりも心身ともに無理なく徐々に健康になればいいじゃないという発想がスローフードなんですね。我々自身がこの発想に切り変わらない限り、地域で軋轢が生じるでしょう。反対に、スローフードという発想でいる限り、同じスローフードを掲げている診療所が何軒かあっても、相乗効果にこそなっても、軋轢にはならないはずです。銀座の街中にブランド店がたくさん並んでいるのが相乗効果になるのと同じように。

平木 まさに広報は体質改善ですよね。

池森 体質改善だからこそ、受け取るだけじゃだめなんですね。自分自身が運動したり、継続させる気持ちを持たないと。

菅沼 徐々にですが、うちもここ2、3年くらいで患者さんからの紹介が増えてきているのは感じますね。なぜかとよく考えますと、広報ツールが充実してきて、それを初診や治療の中で活用していることと無関係ではないのかなと思えます。


【表紙】 「矯正臨床ジャーナル〔JOURNAL OF ORTHODONTIC PRACTICE(JOP)〕
2004年4月号に院長が登場する座談会が掲載されました。」
【はじめに】広報活動の意味するものー2004年度の取り組みと今後の展望
【Section 1】矯正歯科治療は、今まさに過渡期
【Section 2】切り口の異なる受け皿を用意して
【Section 3】インナーコミュニケーションの大切さ
【Section 4】広報=スローフードで体質の改善を
【Section 5】患者に選ばれる医療機関の条件