#119
【Section 1】
大学との連係で一般の意見を吸い上げて



菅沼 2002年に当会が監修という立場で一冊目の啓発ムック『目指せ!きれいな歯並び 大人の矯正歯科Book』(以下、『大人の矯正歯科Book』)を出版しました。私も広報委員として賛歌させていただきましたが、当時、広報担当理事でいらした平木先生に、制作の際の配慮点についてうかがいたのですが。

池森 まず、日本臨床矯正歯科医会というグループが広報事業として制作するものですから、販売促進を煽るような内容はなんとしても避けたいということがありました。矯正歯科に関する自費出版書籍の中には、出版する側の意見や考え方を強くアピールし、利益誘導的な面が透けて見えているものが見受けられます。しかし、我々のような団体で出版する以上、直接的な利用誘導の面は押さえて、一般の方々に「好感」を持って矯正歯科に関する情報を受け入れてもらう必要があります。我々が行いたいことは、あくまでも矯正歯科医療に興味を持っていただける方々、特に良質で公平な情報を提供してその意味を理解していただける方を増やすことにあります。そのため、文中に会員の先生や診療所の固有名詞が極力でないよう配慮しました。ですから巻末の監修や編集後記等のクレジットを入れるところでさえ、我々担当者の固名詞を出していません。これは文章の責任を回避しているという意味ではなく、あくまでも団体で行っているという姿勢を会員にも納得していただくため配慮した一例です。
 とはいえ、誌面には矯正歯科専門医の言葉で治療を語るページも必要だろうということで一人の会員の先生御登場いただいたのですが、その際も診療所の所在地などは載せず、臨床医としての考えを述べていただくにとどめました。また、ご登場いただくにあたって、文中に実名と素顔で登場していただく意味とそれが引き起こす反応予測も事前にご説明して、我々委員会で伏してお願いした経緯があります。このような企画に実名で登場されたいと思われる方もみえるでしょうが、逆にいろいろと憶測されご迷惑がかかる場合も予測されましたので、この企画にご協力いただいたことに感謝しきれない思いです。
 それと、誌面にどうしても盛り込みたかったのが、実際の患者さんの声です。それもただ「矯正歯科治療をしてよかった」ということだけではなくて、治療中の苦労やデメリットについても患者さん自身の口からはなしてもらえるような構成にしたいと考えていました。

平木 と同時に、こうしたムックを広報委員会の独断でつくっているのではなくて、あくまでも会の広報活動の一環であることを会員のみなさんご理解いただけるよう、総会や例会、ニューズレターなどで現状の動きを説明するように務めましたね。それと矯正歯科学会などでも、学会発表として紹介するということを平行して行いました。対外的に会の活動を告知していくのも重要なことですから。

菅沼 私も同感です。新潟の日本矯正歯科学会に転じ発表を3演題行いましたが、展示した『大人の矯正歯科Book』が200冊すべてなくなってしまいましたから、かなり反響はあったのではないかと思います。このように対外的な場で当会の活動を定期的にアピールしていくことは、重要だと思いますね。

池森 ムックが出版された後、早稲田大学の嶋村先生の研究室と連携して我々のつくったムックや啓発意見広告を一般の方がどのように評価しているかをアンケート調査してもらったことも、受け手の意識を知るうえでいい勉強になりましたね。

菅沼 これらのアンケート調査に基づいて昨年、名古屋での日本臨床矯正歯科学会でもムックに関するアンケート調査に基づいた展示発表をしましたが、これらの結果を考察する過程で、今後の広報活動にとても参考になったと思っています。

平木 菅沼先生、ここでその内容をご紹介されてはどうでしょう。

2002年度に出版した啓発ムック『目指せ!きれいな歯並び 大人の矯正歯科Book』(写真左)に続き、2003年9月には、18歳以下の世代を対象にした『親子でLesson!ジュニアの矯正歯科Book』(写真右)を世界文化社より出版。前書同様、日本臨床矯正歯科医会は監修の立場で参加し、誌面は患者の視点で構成されている。

菅沼 そうですね。9月に行われた日本臨床矯正歯科医会の大会で「日本臨床矯正歯科医会が関わった出版書籍に関する消費者アンケート調査についての評価」というタイトルで、『大人の矯正歯科Book』と、ほぼ同時期に本会神奈川市部が保健同人社とり発行した『矯正歯科-歯並びとかみ合わせの最新治療-専門のお医者さんが語るQ&A矯正歯科』の2冊についてアンケート調査を行い、その結果を先きほど池森先生がおっしゃったように、早稲田大学の嶋村先生の研究室で分析していただき、発表しました。
 また10月の日本矯正歯科学会では『大人の矯正歯科Book」に対するアンケート結果(対象:一般読者モニターと治療中および治療終了後の患者さんとその保護者の方等)を集計したものを発表しました。いずれの調査でも、両誌のイメージは全体的に高く評価されました。
 こうした調査を通じて、ムックと書籍という性格の異なる出版形態にすることで年代や消費者層に応じて多角的に情報発信していく必要があることがわかりましたし、一般読者は言うには及ばず、治療中や治療終了後の患者さんとその保護者の方でも矯正歯科治療にかんする情報を必要としておられること、また、冊子の作り方としてはソフトなテイストのほうが効果が高いことがわかりました。それと、治療経験者の方の興味が「知っておきたい基礎知識」に集中したことから、まだまだ矯正歯科に関する情報提供が不足していると考えさせられましたね。それゆえに、こうしたムックを院内での患者さんの説明用のツールとして使用することはインターナルマーケティングにも有効ではないかと感じました。

池森 これからのアンケートを研究・発表する過程で得られたことが、第2弾のムック制作に役立ちましたね。

【表紙】 「矯正臨床ジャーナル〔JOURNAL OF ORTHODONTIC PRACTICE(JOP)〕
2004年2月号に院長が登場する座談会が掲載されました」
【はじめに】さらに多角的な広報活動のために-2年目の取り組み
【Section 1】大学との連係で一般の意見を吸い上げて
【Section 2】「餅は餅屋」の発送で、PR会社に業務依托
【Section 3】バッシング記事への対応策もレクチャー
【Section 4】聴衆の動員に差がついた「市民公開講座」
【Section 5】患者の立場からの情報提供を大切に