#118
【Section 5】
広報活動は、持続させることが大切



菅沼 2002年度の取り組みとしては、雑誌広告のほかに、書籍(ムック)の出版もありました。この計画はどのように進められたんですか。

平木 2002年3月の総会で、書籍の出版を含んだ特別広報事業計画案は「協議題」として案件にあがっていました。その場合 、通常だと総会で一度協議をして、また改めて別の総会で議決をするという手順を踏むんですが、「この提案を、もっと早く実現できないか」という声が会員の方から強くあがりました。そこで、9月に臨時総会にかけるところを、4月に臨時総会を開いていただき、議決したんです。それで5月という早い段階から広報プランがスタートできたという具合です。

菅沼 書籍といっても、いろいろな形態があります。最終的にムックという形を選ばれたのはなぜですか。

池森 金額的な折り合いがついたことがやはり大きいですね。できるだけ安い価格で出したかったんです。と言いますのも、出版物として一般の書店へ流通させて一般の方の目にとまるようにするもの大きな目的でしたが、それと平行して我々が診療所で使っている患者さんへの説明用パンフレット(注:日本臨床矯正歯科医会で一括製作し、各診療所が購入するシステムとなっている)とそう変わらない値段で書籍が出せれば、書籍として市場への流出させるほかにも、診療所にいらした患者さんにお渡しするなど、いろんな使い道があるだろうと。要は、我々サイドでの使い勝手のよさを検討した結果、ムックに決めたわけです。

菅沼 会として一般書を出すのは初めてのことでしたが、出版社の選定などはどのようにされたのでしょう。

池森 出版社を世界文化社に決めたのは、たまたま同時期に本会の会員ではありませんが、石川晴夫先生が出された本の版元がこれまた世界文化社だったので、まずはそこの担当編集者に相談をしたということです。石川先生のご本が出版されたときに我々の会の名簿を巻末に掲載していただいたこともありますが、何よりもその内容がまさに我々の目的としていたテイストに近かったことが大きな理由ですね。内容に偏りが無くて、変に治療の必要性を煽るでもなく、しかも一般の方に親しみやすい語りかけやイラストを多様されていたのが、とても素晴らしいと思いました。
 個人で出版された矯正歯科関係の書籍は過去に数多くありますし、そのほとんどを収集して内容を分析研究してみたりもしましたよ。多くは諸先輩方の英知と思いがこもった素晴らしいものでしたが、近年の出版物に共通していることとして、特定の個人の矯正歯科治療に対する考え方を強くアピールしたり、出版物の宣伝広告に名を借りた著者の診療所の集客目的風の手法をとられる方が目立ちました。その中で、石川先生のご本はとても新鮮に映ったわけです。もちろん、出版社は一社だけではなくて、ほかの大手出版者にも同様にあたっていましたが、我々が当初意識したのは、出版部数が多いことや、我々の患者さんに多い年齢層をターゲットとしているような出版社よりも、いろんな意味で信頼度の高い出版社から本を出したいということでした。それで絞っていくと、世界文化社は広告出稿の際の規制がとても厳しいし、医療に関して怪しげな広告は載せていない。そういう点も大きかったですね。

菅沼 今年度になって広報委員長をやらせていただいて思うのは、広報活動はそのときだけあっていたのでは意味がなくて、長期的ビジョンを持って継続させることが重要だと言うことです。そのあたりは、当時としてはいかがお考えでしたか。

池森 もちろん、広報プロジェクトを始めた以上、この事業を継続させないといけないという思いがありました。そのためには、出版物が翌年度の事業を審議する総会までに会員の手もとに届いていて、何らかの成果が上がっていないと事業継続ができないかもしれない。なので、夏に出版社に正式依頼をして、年内にはなんとかカタチにしなければならないというのが課題でしたね。
 ただ、これまで本づくりというと大学の研究論文を書くときのようにとっても時間がかかるものと言う先入観があったので、果たして本当にできるのかと(笑)。今までこういう出版が議題にのぼっても立ち消えになっていたのは、本をつくるというと1、2年はかかるという思い込みがあったからなんです。
 でも、実際始めるとなったら商業ベースですから、そんなに時間はかけていられません。その分、自分たちも追い立てられながら進めていこうと覚悟を決めました。
 このときに思ったのは、我々の分野では広報啓発用の出版物なりなんなりを作って外部に露出していこうとなった場合、いわゆる聖書のような完成された立派なものをつくらなければならないのだ、という思い込みがあったように思うんです。どこに出しても恥ずかしくない立派なものでなければならない、中途半端なものではダメだという至上主義的な感覚が、結局なかなか動き出せなかった理由ではないかと感じました。

【表紙】矯正臨床ジャーナル2004年1月号に院長が登場する座談会が掲載されました
【はじめに】我々は、なぜ広報活動を始めたか―初年度の取り組み
【Section 1】外部専門家の声を聞くことを皮切りに
【Section 2】各支部を訪ね、会員の声を吸い上げて
【Section 3】雑誌広告は一誌集中から、分散化へ
【Section 4】会員の納得を得るために分納性を選択
【Section 5】広報活動は、持続させることが大切