#118
【Section 1】
外部専門家の声を聞くことを皮切りに



菅沼 本日は、日本臨床矯正歯科医会の取り組みの中で、「マスメディアを使った広報活動をなぜ開始したのか」というテーマで座談会を進めたいと思います。両先生は広報プロジェクト初年度の広報委員でいらしたわけですが、まず、こうした活動をスタートすることになった経緯からお聞かせいただけますでしょうか?

池森 広報活動を始めるに至った直接的なきっかけは、会員に対して行なったアンケート調査の結果でした。それは、何か積極的で具体的な広報活動を会として行なってほしいというものだったんです。
 ただ、そこに至る背景として、歯科医師数が絶対的に増加する中で、必然的に矯正歯科を標榜する先生が増えてきたという事実があります。歯科医師数が増加したことによって、今まで競争原理が働く必要が無く、閉鎖的な状況だった我々の分野でも、徐々に仲間である矯正歯科専門医の数が増え、また矯正歯科も臨床に積極的に取り入れるGPの先生方も増えてきたため、市場が崩れてきたわけです。それによって、これまで寡占状態であった市場が、無秩序で倫理性に問題のある競争が起こりかけてきました。そこに外圧として外資系のフランチャイズが参入するという情報だけが入ってきて、戦々恐々とした。と同時に社会的にも経済が低迷し、先行きの無い不安感も拭えない。
 こうした3つが、我々が広報活動を始めた大きな要因だと思います。

平木 こうした事態をクリアするために個々の診療所が集客目的で宣伝・広告をすると、結局、医療の倫理性が崩れてくる危惧があります。それならば、専門医の団体としての倫理性を保ちながら市場を開拓するために、臨床医の集まりである当会が広報活動をしていくべきだろうということで理事会から指示があったわけですね。
 それまでは、団体として広報活動の実績がさほどなかったのと、金額的にも大きい数字でしたから、思いはあっても、なかなか第1歩を踏み出せなかったというのが正直なところでした。それが、あり方がどんどん具体化して、ようやく我々の手に届くところにまでやってきたとき、ちょうど私が広報担当理事になって、池森先生が担当の委員長になられたんです。

菅沼 それが2001年度ですね。当時の広報委員会の委員長として、最初どのような取り組みをされたんですか?

池森 今,平木先生がおっしゃったように、「さあ、やれ」といわれても、我々はPRについてはまったくの素人なのでノウハウもありません。何をどうするかを手探りする中で、第一歩として始めたのが、外の専門家の意見を聞くということでした。どういうことかと言いますと、心理学者や社会学者、ジャーナリスト、法曹界の方々といったさまざまな分野の専門家とコンタクトをとり、今、我々にはどんなことが求められているのかを客観的に見つめ直す作業を始めたんです。このときに考慮したのは、直接一般の方々に働きかける方法論について可能性を探ってみることでした。

菅沼 と言いますと?

池森 つまり、今まで医療界では何か問題点が生じたときや、新たな要望を実現させるために我々が常套的にとってきた方法というのは、制度面からのアプローチであったり、政策面への要望や働きかけであったわけです。こうした対応については、従来から歯科医師会や学会がその働きかけの窓口になっていましたので、今回はあえて我々の団体が一般の方々に直接働きかけることを探ってみたかったんです。要は、我々医療界が常識的に用いる社会的なアプローチ以外の方法論を考えよう、ということですね。
 そして同時に、現在、診療所単位でどれだけの宣伝広告費をかけているかを調べてみました。これは目安としてタウンページに支払っている費用とその経済効果を調べたわけです。そのうえで、これだけの費用を払っているならもっと有効な方法がありますよ、という資料をつくったんです。

【表紙】矯正臨床ジャーナル2004年1月号に院長が登場する座談会が掲載されました
【はじめに】我々は、なぜ広報活動を始めたか―初年度の取り組み
【Section 1】外部専門家の声を聞くことを皮切りに
【Section 2】各支部を訪ね、会員の声を吸い上げて
【Section 3】雑誌広告は一誌集中から、分散化へ
【Section 4】会員の納得を得るために分納性を選択
【Section 5】広報活動は、持続させることが大切