#116
歯科衛生士:川合香奈・岩瀬さよ子


平成15年11月30日に静岡県のコンベンションア−ツセンターで開催された、第56回東海地区歯科 医学大会に参加しました。今回はメインテーマ『未来を拓く歯科医療』、サブテーマ『患者と協同そして明日の医療』と題して、講演、シンポジュームを聞きました。
講演1
『歯科は、どう変わるか?』“歯科界のためでなく、真に国民のために”
医療ジャーナリスト・(有)秋編集事務所
代表取締役 秋元秀俊

『歯科医療』=『専門科の権威よりも患者の満足が優先される生活レベルの医療(生活の医療)』と秋本先生は考える。『生活の医療』の主役は誰なのか?ということを、いろいろなケースで説明されました。また、リンゴを買うときの売り手と買い手に例えて、医療者と患者さんとの情報量や選択権などについて解りやすく説明されました。

救命の医療
(生命)
生活の医療、日常の医療に変わってきている
生活の医療→主役は患者

医療側 患者側
  4 主訴への応急的処置 1 ↓
  3 主訴に慣例する問題の処置 2  
  2 患者の気付かない問題の処置 3  
↑ 1 再発予防、健康づくり 4  

歯科の場合、医療行為の決定権は圧倒的に患者側が大きいということをおしゃっていました。

例えば、決定権が医療側の方が大きい場合

診てあげる、診てもらうというきれいな関係が成り立つ。
医学の倫理と経験と知識に基づいた治療。

例えば、決定権が患者側の方が大きい場合

医学の倫理や知識だけでは通用しない。

医科と歯科の決定的な違いはここにあること、現在の医学はメディカルトリートメントからヘルスケアに変わり、医療サービスのが救命を頂点としたピラミッド構造から、構造変化を起こし、QOLの向上を主体とした医療に変革しているとのお話でした。また、秋元先生の所に寄せられたお手紙を紹介し、患者さんの解りやすい言葉で説明がされていないので、説明したことが理解できない患者さんが多いことをご指摘されていました。私たちも患者さんに解りやすい言葉でお話しする必要があることを再認識しました。

講演2
『話せる医療者に出会いたい』 “一般市民による模擬患者活動”
東京SP(模擬患者)研究会代表 佐伯晴子

患者さんが主体的に治療に取り組むためには、医療者とのコミュニケーションと治療技術の両面における信頼が不可欠であるが、最近の医療におけるコミュニケーション不足を佐伯先生は指摘する。「説明の方法や説得技術を習得する以前に、相手である患者さんの話を聴いて、相手の事情や考え、不安や疑問を受け入れることが重要。相手の気持ちは聴かなければわからない。相手の気持ちを知らずに行う医療は、厳密に言うと同意を得たことにはならない。患者中心あるいは患者本位の医療とは言えないだろう。」と佐伯先生はおっしゃいます。初診時にある『問診』は、今『医療面接(Medikal Interview)』と呼び方が変わっている。医療面接はすべての医療職、病院職員の方と、患者あるいは患者家族が出会う時に発生するコミュニケーションととらえることができる。何気ない言葉やマナーのせいで、優れた医療技術や病院環境があっても、患者さんの信頼を損ねてしまうのは残念なこと。

『問診』の主語は医療者。
『医療面接』の主語は医療者と患者の相互性を意識したもの。
*inter+view(互いに向き合うという意味)


患者にとっての『医療面接』とは
*大事にしてもらえるか
*話を聴いてもらえるか
*正しく理解してもらえるか
*話がわかりやすいか
「この人なら話やすそう、話してみよう」

話せる医療者

*確かな技術と知識はもちろんだが、気軽に声をかけられ親身に相談に乗ってもらえる医療者。

シンポジウム
メインテーマ『歯科医療は未来を拓けるか?』
サブテーマ 『その先に見えるもの』
秋元秀俊・佐伯晴子・大久保満男

3人の先生方がテーマについて話し合うというものでした。「口腔・歯は極めて優れた感覚受容器であり、生きていることの喜びを実感できる数少ない場所である。」「歯科医療はその人の歯に対する機能を考えた時に、どのような人生をおくるのかを、どれだけ広げることができるか、とても重要である。しかしそれを国民に訴えていくパッションに欠けている。」と秋元先生がおっしゃられ、考えさせられました。秋元先生と佐伯先生のお話には「医療・歯科医療がより良い状態・環境に変革して欲しい」とお考えが端々にかいま見られ、アプローチの仕方は違っても、目指すことは一緒であることが良く理解でき、共感出来ました。

講演3
『幹細胞を使った歯と歯周組織』
名古屋大学大学院医学系研究科頭頸部・感覚器外科学講座教授 上田 実

歯牙や歯周組織の再生医学について研究されておりそれについての発表をされました。2000年の臓器移植法改正後も、日本においてはドナー不足により移植は困難な状況です。それを背景に、肝移植においては、部分肝移植(ドミノ移植)から自己の健康な肝細胞を培養しておいて移植する肝細胞移植の試みがされているとのお話。歯科においては幹細胞から粘膜はもちろん、歯や歯根膜、歯槽骨などが培養歯周組織について再生が可能だということをお話しされていました。また、産業展開の可能性についてもお話しされ、再生医療は歯科からはじまるとおっしゃっていました。未来の歯科医療の一端を垣間見たようで、とても参考になりました。

感想
川合
上田先生の「幹細胞を使った歯と歯周組織」の講演は、大変内容が難しいものでしたが、あまり聞く機会のないお話しでしたので勉強になったと思います。まだ研究途中ですが、天然の歯牙の再生が確認されたお話しや、耳を交通事故で失った人の細胞を使用して耳を再生させた話など、今まで聞いたことのない話でしたので印象に残りました。骨移植など、詳しいことはよくわかりませんが、今後 歯科の分野で多く取り入れられることだと思いました。「患者さんの気持ちになって考える」今まで、いろいろな講習会で耳にした内容でしたが再度考えせられました。患者さんに説明をしたが、理解できていなかったら、説明したことにならない。こちらがよく耳にする言葉でも、患者さんには、わからなかったり、難しいと感じさせたりしてしまうことがあるので、専門用語を一般の方にも解りやすい用語に言い換えて使用するようにしたいと思います。
岩瀬
今回東海地区における大会でしたが、参加者は少なくちょっとさみしい大会でした。参加しているのがほとんどドクターでしたが、午前中の講演は衛生士にもとても分かりやすい内容でした。歯科医療を患者さんにもっと身近に感じてもらえるようにするためのヒントを、いくつか教えていただきました。患者さんの立場で考え、『話せる衛生士』になれるように努力していきたいと思います。