#023
歯科衛生士  岩瀬さよ子

 10月17・18・19日の3日間にわたり、Julie Zickefoose先生による『口腔筋機能障害治療の基本と新しい試み』というテーマで、ベーシックコースの講義および実技指導と、特別講演として、言語聴覚士で筋機能療法士のCindy Landis先生による『口腔運動機能の基礎的概念とその臨床応用』について講義をうけました。その模様をレポートします。

《口腔筋機能障害治療の基本と新しい試み》

A.口腔筋機能障害の定義

口腔顔面筋機能障害に取り組む場合、改善しなければならない最も重要な部分は、舌・口唇及び下顎の正しい安静時の姿勢位を獲得するということである。
口腔顔面筋機能障害を理解するためには、筋機能を改善する要素が何であるかということを知識として持たなければならない。


a.舌、口唇および下顎の正しい姿勢位

1.正しい舌の姿勢位:舌尖は上顎中切歯舌側にある切歯乳頭後方の口蓋前方部に接している。舌背は口蓋に接し、安静を保っている。
2.正しい口唇の姿勢位:口唇はリラックスし、閉鎖している。
3.正しい下顎の姿勢位:下顎はリラックスし、上下臼歯はわずかに開いている。


b.正しい咀嚼と嚥下

1.口腔準備相:食物は咀嚼され、嚥下可能な密度になるまで細かくされる。
2.口腔相:食物と液体が後方に集められる。
3.咽頭相:食物と液体が咽頭を通過する。
4.食道相:食物と液体が食道を通過し胃の中に入る。


c.舌突出癖がある場合の舌、口唇および下顎の姿勢位

1.舌突出癖がある場合の舌の姿勢位:低位で前方に位置づけられた舌の姿勢位は舌突出の嚥下パターンを持つ者に最も一般的に見られる。
2.舌突出癖がある場合の口唇の姿勢位:口唇はしばしば開き、口呼吸を行う者が多い。
3.舌突出癖がある場合の下顎の安静位:低位舌および口唇が開いた安静位はしばしば下顎を下げた姿勢位をつくる。


d.舌突出癖がある場合の咀嚼と嚥下

・咀嚼時における舌の前方への動きと食物および液体を前方部で集める。
・食塊を集める過程と嚥下中の双方で顔面筋の収縮が生じる。


B.原因および療法を妨げる要因

・口呼吸 ・アレルギー ・鼻閉鎖 ・大きな舌 ・肥大した扁桃 
・高く狭窄した口蓋 ・短い又は強直した舌小帯 ・骨格性の形態異常 
・指しゃぶり ・吸舌癖 ・咬唇癖 ・年齢対成熟度(暦年齢対情緒年齢)
・神経学的問題 ・筋肉の問題 ・生理学的問題 ・精神の異常 ・心理的問題
・いろいろな活動で多忙な患者 ・転医を繰り返す患者 ・遺伝的要因


C.舌突出の分類
1.前方突出型(開咬) 4.両側性突出型 7.下顎突出型
2.前方突出型(前歯前突) 5.前方.両側性突出型
3.片側性突出型 6.上下顎突出型

D.カテゴリー別に見た口腔筋機能療法のエクササイズ

・各エクササイズの回数はおおよそのものであり、練習量は患者の能力によって変わる。
・どのエクササイズを選ぶかは患者の筋機能療法における進行状況と、その患者の持つ特有の口腔顔面筋機能障害により決められる。


a.口唇のエクササイズ:ボタンを使用した練習や口唇のマッサージ


b.嚥下に使われる筋肉のためのエクササイズ

1.咬みしめ:咬筋、側頭筋の収縮確認
2.舌尖の位置づけ:スッポト(舌尖の正しい位置)の確認
3.舌尖のコントロール:舌尖をできるだけ鋭く尖った形に保つようにする。
4.舌中央部の位置づけ:舌全体を口蓋に吸い上げる。
5.舌後方部の位置づけ:人差し指または、スティックで舌尖を軽く押さえ“カッ”と発音させ、軟口蓋に向かって舌後方部が持ち上がる感じを確認。
6.舌と口唇の姿勢位(ポスチャー):舌下部にストローを当てたまま、犬歯後方でこのストローを軽い力で咬んで保持する。
7.唾液の収集と液体の嚥下:舌尖をスポットにつけたまま、左右交互に口角からスプレーで水を注入し嚥下する。
8.飲む練習:舌尖をスポットにつけ、臼歯を軽く咬んだままの状態を保ち、口唇に水の入ったコップをつけ、吸い込み舌後方を持ち上げて嚥下。
9.咀嚼と嚥下:食物を使い咀嚼、嚥下の練習。
10.習慣化:咬筋、側頭筋の収縮を感じてもらう。



《口腔運動機能の基礎的概念とその臨床応用》

A.口腔運動機能治療の目的

1.口腔顔面領域の感覚、認知と固有感覚受容の増強
2.口腔領域の防御感覚や非機能(生理)的反射の抑制
3.様々な食品性状や香りに対する受容域の拡大
4.過度な流涎(よだれ)の抑制
5.構音や嚥下パターンの洗練に必要な.口腔領域各器官の運動の分化


B.口腔運動機能の基本概念

1.胎生期から成熟期まで連続的に発達:運動の分化は繰り返し進行。
2.姿勢の安定性と可動性:舌安定と下顎の安定。姿勢の安定が可動の基礎となる。
3.回旋:顎を側方に動かすこと。「くちゃくちゃ食べ」は回旋能の未発達を示している。
4.筋緊張の状態:ある程度の変動は正常である。ギャップが激しいのはよくない。


C.抑制と促通の手法

1.口腔領域の感受性検査法
2.既往歴
3.直接的検査


D.口腔領域のノーマライゼーション(正常化)

・マッサージ法
・様々な食品、温度や口腔清掃用具の利用法
・嘔吐反射の抑制
・過剰なよだれの抑制
・摂食について
1.口腔運動機能の言語治療への応用
2.口唇口蓋裂患者に対する.口腔運動機能療法
3.顔面神経障害例への応用



《感想》
 今回、初めて、筋機能療法( MFT)講習会に参加しました。初心者にもわかりやすくマニュアルノートを作成していただいたり、数名のアドバイザースタッフが常にそばにいたりと、至れり尽くせりで、なおかつ、たいへん内容の濃い講習会でした。実際に実技指導をうけ、あらためてMFTトレーニングの重要性、大変さというのを感じました。患者さんを指導する前に自分がきちんとお手本になれるよう自分自身も練習が必要だということに気づきました。今後は菅沼矯正歯科で行っている患者さんへMFTの指導の方法や見る目をあらためると共に、患者さんの正しい口腔筋機能の習得、悪習癖の改善のため効率の良い指導が行えるよう努力して行きたいと思っています。また、自分自身の向上へつなげられるよう、今回の講習会を是非生かしていきたいです。