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| 院長 菅沼與明 |
10月8日〜11日の4日間の日程で東京国際フォーラムにおいて“Orthodontic Waves 西から東から ―出会って、新たな潮流を―”をテーマに行われた日本矯正歯科学会に10月10・11日の2日間参加してきました。その模様をレポートいたします。
私は、菅沼矯正歯科のスタッフとともに日本矯正歯科学会学術大会に参加してきました。今回の大会は日本矯正歯科学会の創立75周年記念大会や第60回年次大会。また、第3回国際学会であり21世紀初めての大会ということもあり節目の学会でもあり講演内容は海外からのスピーカーや、矯正歯科の隣接医療からの講演者や、矯正歯科医療行政の講演、日本の矯正専門開業医を代表する著名な先生方によるパネルディスカッションなど多岐にわたりました。私は前日にAngle Society of Orthodontists 34thBiennial Meetingに参加し、帰国したばかりなので、自らの発表などは行わず、講演を聴いたり、展示発表を見たり、同業の先生や、業者の人たちと情報交換をすることに終始しました。
私が聞いた講演で興味深かったものとしては、「矯正歯科と医療経営環境」と題したパネルディスカッションがありました。パネラーは広島国際大学医療福祉学部医療経営科 岡部陽二先生、(株)デンタル・マネジメント・コンサルティング 稲岡 勲、医療ジャーナリストで秋編集事務所 秋元秀俊、愛知学院大学歯学部歯科矯正学講座 後藤滋巳先生、花岡矯正歯科クリニック 花岡 宏先生、ふかわ矯正歯科 府川俊彦先生です。それぞれの立場で講演され、その後ディスカッションされました。後藤先生は大学の教授という立場から、「近年の歯科界が歯科医師過剰問題や診療報酬の伸び悩みなど先行き不安があり、歯科学生も特徴のある歯科医師を目指し、矯正学を志す先生が多くなってきている。良い矯正臨床医を育成するためには、教育、研究、臨床、人間形成などを大学が担っていかなければならない」と講演で述べていました。
花岡 宏先生は矯正医専門開業医の立場から、「現在の経済状態、歯科医師過剰時代での矯正専門医以外の歯科医の矯正治療などを上げ、矯正専門医開業医の患者数の減少、経営悪化、矯正歯科医療の質の格差の拡大などの現状を上げ、学校歯科検診では約30%もの矯正歯科治療の必要な不正咬合者がいるにもかかわらず、実際に受けているのはその数%にすぎない、これは啓発活動の不足と、矯正治療のほとんどが自費治療である、医療保険制度に問題があるのではと現状を報告され、1.厚生労働省認定の専門医制度の確立。2.矯正歯科治療の啓発。3.公的保険の一部負担による混合診療や民間保険の整備などをあげていました。」
府川俊彦先生も矯正医専門開業医の立場からお話をされましたが、かなり特殊な環境で診療をされているのではないかと私には見受けられました。先生は近隣の形成外科や口腔外科と連携し、患者の約20%を、唇顎口蓋裂や顎変形症の矯正治療患者を保険で行っているとのことでした。(顎変形症患者の矯正歯科治療は顎口腔機能診断施設においての保険適応が可能ですが、菅沼矯正歯科では検査機器や手術を実施していただく医療機関などの問題から、現時点では施設認定を取得しておりませんので自費治療になります。唇顎口蓋裂の患者さんは更正・育成医療の指定医療機関ですので、保険適応はもちろん市町村からも補助金が受けられ患者さんの費用負担はありません。)府川先生は、健康保険で治療ができる患者の範囲を拡大できるよう行政に働きかけがもっと必要であるとのお話をされていましたが、来年4月から実施されようとしている医療制度改革を見ても、患者負担を増やす方向に移行しており、破綻寸前の健康保険制度から考えると、困難なのではないかと私は思っております。
私には、秋元氏がお話しされたことが一番、的を得ていたと感じられました。秋元氏は「矯正歯科は何のためにあるのでしょうか?」の問いかけから始まり、「矯正歯科の特殊性、健康度を高めるQOLモデルとしての医療であり、歯科治療自体が生命に直接関わる医療ではなく生活の質に深く関わる医療であり、近代医療の枠に収まらない一面を持っている。歯科では残念なことに虫歯の穴を詰めたり、歯の欠損に入れ歯を入れるといった、障害の回復を仕事としてきたことが、矯正歯科のアイデンティティを解りにくくしている。予防指向、健康指向をバックグランドにQOLの向上などのアイデンティティを明確にすることが、マーケットに確固たる地位を築くことになるのでは・・・。」との内容でした。
もう一つ、「矯正臨床 時流を越えて -矯正専門開業医として、何を視、どう伝えるか-」というタイトルで矯正専門医として、著名な与五沢先生、浅井先生、尾崎先生、中島先生、根津先生のパネルディスカッションがあり、興味深く、また今後、私が矯正専門医として仕事をしていく上で貴重な経験豊富な先生方のディスカッションを聞くことができました。これまでの日本矯正歯科学会は大学の矯正歯科学講座を主体に運営されており、学会の会長も矯正歯科学講座の教授が務めてきています。日本矯正歯科学会では矯正専門医の先生が公式に発言する場は非常に少なく、このような企画は非常にめずらしいことです。
与五沢先生は、30年前の矯正臨床と比較すると現在は、治療法や材料は進歩したが、矯正医のプロとしての仕事が簡単になったわけでは決してなく、プロとして身につけいなければいけない知識と技術はさらに高度なものが求められており、現状の矯正専門医の養成制度、教育制度には心配な部分ある。矯正歯科医療の信頼性に問題が出てくるのでは?特に治療法や材料の進歩により矯正専門医ではない歯科医が、きちんとした矯正の知識や技術を習得しないまま、患者治療に当たっていることを危惧しています。一刻も早く、きちんとした専門医制度を作らなければ国民にとって不幸な事態を招くのでは・・・というようなことを心配し、今後の矯正専門医制度のきちんとした運用を求めていました。さすがに、日本の矯正専門医の重鎮だけあって、迫力あるお話ぶりでした。
浅井先生も矯正歯科医とOrthodontist(英語で矯正歯科医の意味)を比較し、日本型のあいまいな専門医制度を我々専門医が参加し、名実ともに認められる矯正専門医制度にシステムの改変が必要との提言をされていました。
根津先生は、現在、矯正医過剰時代を迎えるようになっているが、今後の矯正歯科医が目指す方向性について、やはり矯正専門医制度や教育制度にも触れながら、お話をされていました。
今回の学会で、先生方の講演や質疑応答や、色々な先生や業者たの情報交換などを通して感じたことは、日本矯正歯科学会の法人化や、矯正歯科専門医制度の導入・適正な運用、矯正歯科専門医の養成制度・教育制度統一カリキュラム、矯正歯科医療における保険制度導入など、また、矯正歯科医過剰や日本の経済不況など大変難しい問題を我々は抱えていることを再認識しました。
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