#021
スタッフ一同

 10月8日〜11日の4日間の日程で東京国際フォーラムにおいて“Orthodontic Waves西から東から―出会って、新たな潮流を―”をテーマに行われた日本矯正歯科学会に10月10・11日の2日間参加してきました。その模様をレポートいたします。
 10月10日は、午前中に商社展示と学術展示を見てまわり、午後からは記念セミナーセッションD「矯正治療と隣接医療」をテーマとした3人の先生方の講演を拝聴しました。
 10月11日は午前中にパネルディスカッションセッション1「矯正歯科と医療経営環境」をテーマとした6人の先生方の講演を拝聴し、その後、テーブルクリニックで、衛生士は「ホワイトニングの実際」受付・技工士は「矯正歯科診療所における、パソコンの有効活用」をそれぞれ受講しました。午後にはスタッフアンドドクターセミナーがあり「口腔習癖をめぐって―とくに指しゃぶり、爪噛み、舌癖への対処―」をテーマとして3人の先生方の講演を拝聴しました。

 学術展示では、症例や治療法や、基礎的な研究発表等に関しての専門的な研究内容が多く、スタッフとしての立場からでは知識として頭に入れておくにしても難しいものでした。中にはいくつか興味を引かれる物もありましたが、講演の時間もあり、拝見できる時間が短かったのが残念でした。

【矯正治療と隣接医療】

「咬合再構成と下顎頭位」日本歯科大学歯学部歯科補綴学 小林義典先生
咬合問題に起因する持続的な下顎頭偏位は生体活動、自律神経系の機能、血圧、耳器官に影響を及ぼすこと、あるいは、生体の疼痛に関与する可能性がある。

「矯正と口腔外科との連携の過現未」鶴見大学歯学部口腔外科学 瀬戸先生
60年代には口腔外科と矯正科は切り放されて考えられており、70年代になりチーム医療が成立、安定した手術と術前後の矯正コンセプトが確立した。そして現在、術式は多様化し、精度の高い手術が行われるようになった。今後は矯正歯科と口腔外科のチーム歯科医療としての更なる発展が求められる。

「歯周病患者の矯正治療への展望」
愛知学院歯学部歯科保存学 野口俊英先生
基礎的研究の進展により、歯周病の病因、病態、治療法が大きく変化しつつある。また歯周病患者の矯正治療は、不正歯列により生じる外傷やプラーク沈着促進因子としてのいわゆるリスクファクター(危険因子)を除去する病因除去療法として重要であるのみならず、健康時とは明らかに劣る歯周組織の状態の口腔状態を最大限に高めさせるために重要な処置である。

当院でも最近は成人患者が増えており、それに伴い歯周病の患者に出会うことが多くなりました。歯周ポケット診査、ブラッシング指導を何回か続けて行くのですが矯正治療に移行できる時期を見抜く事は難しく、現在は一般歯科や歯周病専門医のドクターに頼る事が多くあります。また一度歯周病になったことのある患者は誰しも危険な因子を持っていますので、歯周病に対しての見る目を養っていかなければならないと感じました。


【矯正歯科と医療経営環境】
「医療経営の日米比較」広島国際大学医療福祉学部医療経営科 岡部陽二先生

「患者を引き付ける医療経営」(株)デンタル・マネジメント・コンサルティング 稲岡 勲
患者あるいは一般歯科医への矯正治療に関する情報の更なる啓蒙を。一人一人の患者の期待にそれぞれに合った医療が提供でき、そしてそれに満足してもらうことが大切。スタッフの果たす役割の重要性を強調されていました。

「患者に求められる矯正歯科」
秋編集事務所 秋元秀俊
今、矯正で求められていることは、生活に深く関わる健康の為の医療であるということ。アイデンティティを明確にすることである。

「矯正治療の啓発と質の向上を」
愛知学院大学歯学部歯科矯正学講座 後藤滋巳先生
歯科矯正治療に関する情報を広く解放すること。関連する歯科医科の各専門分野との連携強化。国民の歯科医療向上への対社会、対行政への働きかけ。矯正歯科治療の質的向上。

「現状と提言」
花岡矯正歯科クリニック 花岡 宏先生
現状として、国民の30%が不正咬合、つまり矯正治療対象者であるということ。将来、自身の歯列・咬合に関しての国民の意識向上と歯科疾患の予防に矯正歯科治療が貢献してくる。

「保険診療による矯正治療」
ふかわ矯正歯科 府川俊彦先生
矯正治療を受けなかった理由として、治療費が高いこと、治療期間が長いこと、装置をはめたくないなどがあげられる。その中でも問題が治療費が高額であるということ。現在、保険適用患者はふかわ矯正歯科では20%を越えるが、適用は一部患者のみ。一般歯科での矯正治療もあるので、患者の確保及び、一般市民に矯正専門医の存在をアピールするためにも、保険適応の矯正治療患者であっても質の高い医療を行うよう心掛けるべきである。

 各先生の視点や立場から、矯正歯科診療の現状と今後の医療経営の為の問題点、重要事項などいろいろなお話が聴けました。

【口腔習癖をめぐって―とくに指しゃぶり、爪噛み、舌癖への対処―】
「Tongue Thrust:Causes,Effects and Correction through MFT」Julie Zickfoose

「歯科衛生士の立場から『指しゃぶり指導の実際』」
大野矯正歯科クリニック 橋本律子
歯列や咬合に影響する指しゃぶりの癖を治す指導の実際と症例発表。指導は3段階に分かれており、第一段階として指導表などを用い意識化と意識の持続を求め、第二段階では指サックや手袋を使用、第三段階ではハビットブレーカーの使用として、患者に合わせて各段階で指導。効果的な指しゃぶりの指導としては、患者や保護者の情報を多く持つこと、指しゃぶりの原因や背景を探ること、歯並びに影響する因子を念頭におくこと、患者を暖かく見守り支援すること、多分野に渡り知識を深めることなどがあげられる。

「臨床心理の立場から見た『指しゃぶり』『爪噛み』」
東京学芸大学教育実践総合センター 小林正幸先生
指しゃぶり、爪噛みは神経性習癖の一種である。身体玩弄癖と言われ、その行為の結果に快感が伴い、快刺激によって強化され習慣化したもので、その背景には、本人を巡る環境に様々な心理的問題が関与しているとのこと。治療には、指サック等の補助具による行動抑制の他に、症状への注目・制止による強化として、症状がないことに対してほめることなど。また、ストレスへの対処方法を教え、生活に安心感を与えること、さらに環境に快適さが見いだせない場合などには、緊張や不安を緩和し、遊びの拡大への援助や、家族関係の歪みを調整することなどが重要となる。

 講演にしても展示にしても、専門的な事柄が多く、全てを理解するにはまだまだ知識が足りないことを改めて認識させられました。
 口腔習癖に関しては、衛生士として学ぶべきところは多々ありました。当院でも舌癖の指導を行っています。現在は指導において、患者の心理状態までは観察できていないかもしれませんが、今後はそういった精神的な面まで考えることが出来るよう努めて行きたいです。
 時間に追われていた面もあり、じっくりと講演を聴けたものは少ないですが、今回の学会において、衛生士として、また矯正歯科に勤めるスタッフとして、勉強になった部分は多くあったと思います。そこから今後の診療に活かされるものがあれば、お互い話し合い、積極的に取り入れて行きたいと思います。