#010

Question.
私は歯並びが悪いのですが、私の母親や、姉妹も歯並びが悪く、似たような歯並びをしています。歯並びの悪さは遺伝なのでしょうか?もし、遺伝以外にも歯並びを悪くする原因があれば教えてください。


2001年4月26日
 東愛知新聞朝刊

Answer.
歯並びの悪さは、かなりの確率で遺伝します。しかし、遺伝だからといって治しにくいということはありません。親、兄弟や親類の人たちと顔や体型が似るように、顎骨(がくこつ)の形態、歯の数、歯の大きさ、歯並びや、噛(か)み合わせも遺伝します。矯正歯科治療を行うことにより治すことは可能ですから、あきらめないでください。 また、遺伝的な要因で歯並びの悪さや、噛み合わせがすべて決まってしまうわけではなく、日常生活の中や、病気などと関連して、遺伝以外に歯並びの悪くなる要因は多々あるのです。ですから、ご両親や兄弟、姉妹は良い歯並びで、噛み合わせも良いのに、家族で一人だけ歯並びが悪いということもあるのです。 例えば、このような原因の一つに「習癖」があげられます。「指しゃぶり」と悪い歯並びとの関係はみなさんもご存知でしょう。もちろん、赤ちゃんのころの「指しゃぶり」は成長過程に起こる自然の現象なのですが、四、五歳になっても「指しゃぶり」をしていると、歯並びが悪くなる原因になります。上顎や、上の前歯が前につきだしてしまったり、上の前歯と下の前歯が噛み合わなかったりします。 また、乳歯は永久歯が生えてくるからと、軽く見られがちですが、乳歯がムシ歯で早くなくなってしまったり、抜けるのが遅くなることも、永久歯の歯並びが凸凹になる原因になるので、注意が必要です。このようなことは、歯科医院で定期検診を受けていれば防げることです。 日常、何げなくしてしまっている癖さえも、歯並びを悪くすることがあるのです。例えば、唇を咬(か)む、唇を吸う癖。下唇を咬む癖によって、上顎や上の前歯が前に突き出してくるのです。爪をかんだり、毛布などをかむ、口で呼吸する癖も歯並びを悪くする原因になりますので、直した方がよいでしょう。 また、成長期にいつも決まった方向に「ほおづえをつく」癖や、物を食べるときに片側だけで咬む「片咀嚼(へんそしゃく)」も、下顎が横に曲がって成長してゆく原因になります。特に最近多く見受けられる癖では、アレルギー性鼻炎など鼻での呼吸に問題があり、口での呼吸を行う人「口呼吸」や、舌の位置が悪かったり、食べ物などを飲み込む嚥下(えんげ)の際に舌を突き出す「舌癖」「舌突出癖」なども悪い噛み合わせの原因となります。 特にこのような悪い癖は、顎骨の成長に影響を及ぼしますので、早期の改善が必要でしょう。全身的な病気も歯並びと関係があります。内分泌障害、特に脳下垂体や甲状腺の障害が歯並びと深く関係があります。例えば、脳下垂体の機能が異常亢(こう)進すると、下顎の骨が過成長し、骨格性の下顎前突になることが多く認められます。 いずれの場合にも矯正歯科治療によって、治すことは可能です。ただし、覚えておかなければならないことは、矯正治療を受けてきれいな噛み合わせになった場合でも、その次の世代には遺伝的な顎の問題や、悪い歯並びは遺伝子により受け継がれるため、出てくる可能性があるということです。 例えば、一重まぶたの人が、二重まぶたに整形しても、子どもは一重まぶたになるのと同じです。 悪い歯並びや、噛み合わせの矯正治療については、かかりつけの歯科あるいは矯正歯科で、歯科医師にご相談ください。

菅沼與明
2001年4月26日 東愛知新聞朝刊掲載